医療痩身で全身痩せはできる?全身に働きかける治療と部分痩せとの違い

「全身を痩せたい」と考えるとき、医療痩身の治療には体重全体に働きかけるものと、体の一部分に働きかけるものがあります。

全身に働きかけられるのは、食事療法・運動療法・行動療法などの生活習慣改善と、条件を満たした場合の薬物療法です。

脂肪冷却などの機器を使った施術は、施術した部位に働きかける治療であり、複数部位に行っても全身の体重に働きかける治療とは目的が異なります。

部分痩せの施術については『医療痩身 部分痩せ』で詳しく解説していますので、この記事では全身に働きかける治療を中心に整理します。

この記事の要約

  • 全身の体重に働きかけるのは食事療法・運動療法・行動療法と条件を満たした場合の薬物療法であり、脂肪冷却などの機器施術は施術部位に働きかける治療です。
  • 肥満症治療薬は生活習慣改善で十分な効果がみられない場合に考慮する位置づけで、健康障害を伴わない肥満や美容目的での使用を想定した薬ではありません。
  • 脂肪冷却の装置は部分的な皮下脂肪の減少を目的とし、体重の減少を意図する装置ではないため、複数部位への施術を重ねても全身痩せにはつながりません。
  • 全身痩せの治療を検討する場合は、まず診察で肥満症に該当するかを確認することが入口になり、自己判断で薬物療法の対象を決めることはできません。
  • 薬物療法には低血糖や急性膵炎などの重大な副作用や禁忌となる条件があり、治療中も食事療法・運動療法の継続が求められます。

医療痩身で全身に働きかけられるのはどの治療か

全身の体重に働きかけられるのは、食事療法・運動療法・行動療法などの生活習慣改善と、条件を満たした場合の薬物療法です。脂肪冷却などの機器を使った施術は、施術した部位に働きかける治療であり、全身の体重に働きかける治療とは目的が異なります。まずこの区別を押さえておくことが、治療を選ぶうえでの出発点になります。

全身の体重に働きかける医療痩身

医療痩身における全身への治療は、薬だけで完結するものではなく、食事療法・運動療法・行動療法などの生活習慣改善が基本になります。薬物療法は、その基本治療を行ったうえで検討される位置づけの治療です。

食事療法・運動療法・行動療法

肥満症に対する薬物療法は、食事療法・運動療法・行動療法といった生活習慣改善療法を行っても十分な効果がみられない場合に、考慮するとされています。生活習慣の見直しが治療の土台であり、薬物療法はそれを補うものという位置づけです。

肥満症に対する薬物療法

肥満症の治療薬として、ウゴービ皮下注(一般名:セマグルチド)とゼップバウンド皮下注(一般名:チルゼパチド)が承認されています。これらは肥満症の効能・効果で承認された薬であり、健康障害を伴わない肥満や、低体重・普通体重の人に対して美容・痩身目的で用いる薬ではないと明記されています。

医療痩身で局所の施術を重ねても全身痩せにはならない理由

医療痩身では、脂肪冷却など体の一部に行う施術もありますが、これらは全身の体重に働きかける治療とは目的が異なります。

脂肪冷却の装置は、添付文書の使用目的に「部分的に皮下脂肪を冷却し、減少させる装置であり、体重の減少を意図するものではない」と記載されています。太もも、腹部、二の腕など複数の部位に施術を重ねても、それぞれの部位の皮下脂肪に働きかける治療であることに変わりはなく、体重全体に働きかける薬物療法や生活習慣改善とは仕組みが異なります。

医療痩身で全身痩せを目的にする場合は何をすればいいの?

全身に働きかける治療を検討する場合、その入口になるのは自己判断ではなく医師の診察です。

肥満症と診断されるかどうか

肥満と肥満症は異なる概念です。肥満はBMI等による体格の分類であり、肥満症は肥満に関連する健康障害を合併している、またはその合併が予測され、医学的に減量を必要とする状態として定義されています。肥満というだけでは肥満症治療薬の対象にはならず、肥満症に該当するかどうかは、問診や検査を含めた診察を通じて医師が判断します。

医療痩身が保険診療になる場合と自由診療になる場合

医療痩身には、条件を満たせば保険診療の対象になる場合と、自由診療として提供される場合があります。適用の可否は治療内容や状態によって異なるため、詳しくは『医療ダイエット 保険適用』で解説しています。

医療痩身で全身に働きかける治療のリスクと副作用

薬物療法を検討する際は、期待される変化だけでなく、報告されている副作用も確認しておく必要があります。

重大な副作用として、低血糖、急性膵炎、胆嚢炎、胆管炎、胆汁うっ滞性黄疸が挙げられています。また、高度肥満症の患者では、メンタルヘルスの変化にも注意するとされています。これらは頻度が明確に示されているものではなく、起こることがある副作用として電子添文等に記載されています。

医療痩身を検討する際の注意点

薬物療法には、投与できない、または中止が必要になる条件があります。

  • 妊婦、または妊娠している可能性のある女性には投与しません。
  • 2ヶ月以内に妊娠を予定する場合は、投与を中止します。
  • 糖尿病性ケトアシドーシスや1型糖尿病等がある場合は禁忌とされています。

実際に治療を受けられるかどうかは、既往歴や併用薬を含めた診察のうえで最終的に判断されます。

全身の治療と部分的な施術を併用する場合

全身の体重に働きかける治療と、部分的に脂肪を減らす施術は、目的が異なる治療です。

そのため、両者を組み合わせるかどうか、また、どのような順序で行うかは、個々の状態を踏まえて医師が判断する事項です。組み合わせを一律に勧めたり、特定の順序を推奨したりできるものではありません。部分的な施術の詳しい内容については『医療痩身 部分痩せ』で解説しています。

医療以外に必要になる取り組み

薬物療法を行う場合も、治療がすべてを代わりに行うわけではありません。

食事療法・運動療法を継続すること、定期的な栄養指導を受けることが、治療とあわせて求められています。極端な食事制限は体調を崩す原因になり得るため、無理のない範囲で継続することが基本になります。

医療痩身に関するよくある質問

全身痩せに関して寄せられることが多い疑問を、Q&A形式で整理します。

全身の施術プランを選べば全身痩せできますか?

施術のプラン名に「全身」と付いていても、脂肪冷却など局所に働きかける機器施術を複数部位に行うことと、体重全体に働きかける治療は別のものです。全身痩せを目的とする場合は、生活習慣改善や薬物療法など、体重に働きかける治療の対象になるかどうかを診察で確認する必要があります。

体重が標準でも全身痩せの治療は受けられますか?

肥満症の治療薬は、健康障害を伴わない肥満や、低体重・普通体重の人に対して美容・痩身目的で用いる薬ではないと明記されています。体重が標準的な範囲にある場合、薬物療法の対象にはならないため、まずは診察で適応があるかどうかを確認することになります。

全身に働きかける治療はどのくらいの期間続けますか?

薬物療法の投与期間や生活習慣改善に取り組む期間は、治療の目的や経過によって異なります。報告されている数値も特定の期間における結果であるため、自分の場合の見通しは診察で確認してください。

薬物療法と部分痩せの施術は同時に始められますか?

同時に開始できるかどうかは、体の状態や治療内容によって異なり、可否や順序は医師が判断する事項です。この記事内で組み合わせを一律に勧めることはできないため、気になる場合は診察で相談してください。

まとめ

医療痩身で全身に働きかけられるのは、食事療法・運動療法・行動療法などの生活習慣改善と、それでも十分な効果がみられない場合に検討される薬物療法です。脂肪冷却などの機器を使った施術は、施術した部位の皮下脂肪に働きかける治療であり、複数部位に行っても全身の体重に働きかける治療とは目的が異なります。薬物療法を検討する場合も、肥満と肥満症は異なる概念であるため、対象になるかどうかは自己判断ではなく診察で確認する必要があります。重大な副作用や禁忌となる条件もあり、部分的な施術との組み合わせも医師が判断する事項です。費用や通院の負担とあわせて、診察の中で医師に相談しながら、無理のない治療方針を決めていくことが大切です。

参考・出典

PMDA最適使用推進ガイドライン セマグルチド(ウゴービ皮下注) https://www.pmda.go.jp/files/000281140.pdf

肥満症治療薬の安全・適正使用に関するステートメント https://www.pmda.go.jp/files/000275251.pdf

クールスカルプティング(脂肪冷却機器)添付文書一式 https://www.info.pmda.go.jp/ygo/pack/112130/22900BZX00410000_A_02_01/