ボトックスを打ち続けるとどうなる?抗体・筋萎縮の可能性と長期投与データ
『老ける』『不自然になる』といった言説がありますが、この記事では添付文書と臨床試験データで確認できる範囲を基準に整理します。
ボトックスを繰り返し投与した場合に起こり得る変化は、大きく「効きにくくなる可能性」と「筋肉・見た目への影響」の2つに分けられます。
それぞれについて、確認されているデータと、まだ確認できていない範囲を分けて解説します。
この記事の要約
- ボトックスを繰り返し投与すると、中和抗体の産生により効果が認められなくなることがあります。
- 国内の長期投与試験では、最大5回までの反復投与でいずれも高い改善率が確認されています。
- 添付文書には脱神経性萎縮・筋萎縮の記載がありますが、ヒトでの長期反復による頻度は分かっていません。
- 『老ける』『不自然になる』という言説は、臨床試験データで確認された記載ではなく、断定できません。
ボトックスを打ち続けることで生じ得る変化は大きく分けて2つ
ボトックスを長期間繰り返し投与した場合に起こり得る変化は、添付文書や試験データをもとに整理すると、大きく「効きにくくなる可能性」と「筋肉・見た目への影響」の2つに分けられます。ここから、それぞれの内容を確認できる範囲で説明します。
①繰り返し投与で抗体ができ、効果が出なくなることがある
添付文書8.2.3には「本剤の投与を長期間繰り返した場合、中和抗体の産生により、効果が認められなくなることがある」と記載されています。
また8.3では、効果の減弱がみられた場合には抗体検査を実施し、抗体が産生されていなければ追加投与を検討し、産生されていれば投与を中止するとされています。
国内の長期投与試験で確認されていること
眉間の表情皺を対象に、最大5回まで反復投与した国内長期投与試験では、10単位群180例・20単位群183例において、各投与回の4週間後の改善率がいずれも90%以上を示したと添付文書に記載されています。
これは眉間という部位、この単位数、この回数までの条件で確認されたデータであり、他の部位やさらに多い回数の反復投与にまで一律に当てはめられるものではありません。
②筋肉が萎縮する・薄くなる
添付文書11.2のその他の副作用には「脱神経性萎縮/筋萎縮」が頻度不明で記載されています。
また15.2.2には、動物実験(ラット及びサル)で本剤投与部位以外の遠隔の筋において、筋萎縮や筋重量減少等の障害が発生したとの報告があります。
ヒトでの長期反復投与による筋萎縮の頻度や、元に戻るかどうかについては明確な記載がなく、現時点では医師に確認したい事項として残ります。
老けて見える・不自然になるという不安
表情筋の使用が減ることと見た目の変化を結びつける主張はよく語られますが、添付文書や臨床試験データで確認できる記載ではありません。
断定的に採用せず「確認できていない範囲」として扱うことが大切で、過度に不安をあおられる必要はありません。
ボトックスを打ち続ける場合に注意しておきたいこと
長期間ボトックスを使用する場合は、次の点に注意しておくと安全性を保ちやすくなります。
添付文書8.2.7には、他の医療施設でボツリヌス毒素の投与を受けている場合、治療対象疾患及び投与日を必ず医師に申し出るよう記載されています。
適切な投与間隔を守り、複数の医療機関で並行して投与を受けている場合は、必ず担当医に伝えるようにしてください。施術の内容や単位数の考え方は、施術ページでも確認できます。
ボトックスに関するよくある質問
ここでは、ボトックスを打ち続けることについてよく寄せられる質問に回答します。
何年も打ち続けても大丈夫ですか?
国内の長期投与試験では、眉間を対象に最大5回までの反復投与で高い改善率が確認されていますが、さらに長期・多数回にわたる投与については確認できているデータが限られています。
長期間使用する場合は、担当医と相談しながら経過を確認していくことが大切です。
一度やめたら元の状態に戻りますか?
筋肉への作用は時間の経過とともに薄れていくとされ、投与を中止すれば表情筋の動きは徐々に戻っていくと考えられています。
ただし、長期反復投与後の筋萎縮の可逆性についてはヒトでの明確なデータがなく、確認できていない範囲として扱われます。
抗体ができたかどうかはどう分かりますか?
自分で判断する方法はなく、添付文書でも効果の減弱がみられた場合に抗体検査を実施するとされています。
効きにくさを感じたら自己判断で単位数を増やすのではなく、担当医に相談し、必要に応じて検査を受けてください。
まとめ
ボトックスを打ち続けた場合に起こり得る変化は、添付文書をもとに整理すると「効きにくくなる可能性」と「筋肉・見た目への影響」の2つに分けられます。
長期間繰り返すと中和抗体の産生により効果が認められなくなることがある一方、国内の長期投与試験では最大5回までの反復投与でいずれも高い改善率が確認されています。
脱神経性萎縮・筋萎縮は添付文書に頻度不明で記載されていますが、ヒトでの長期反復による頻度や可逆性は明確ではありません。『老ける』『不自然になる』という言説も、データで確認できる記載ではなく断定できません。
効きにくさや気になる変化を感じたら、自己判断で対応せず、担当医に相談し必要な検査を受けることが大切です。
参考・出典
PMDA 医療用医薬品 添付文書 ボトックスビスタ注用50単位/100単位 https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/112130_122940AD1026_3_03
目崎高広 ボツリヌス治療 神経治療学 2018;34(4):359-362 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnt/34/4/34_359/_article/-char/ja