エラボトックスは何単位が必要?国内承認の用法と単位数の決まり方を解説
「40単位」「80単位」など、エラボトックスの単位数として異なる数字を見かけて、判断に迷っていませんか。
この記事では、国内で承認されている用法・用量を基準に、単位数がどのように定められているか、数字の差がなぜ生まれるのかを整理します。
単位数が多いほど良いわけではない理由や、受けられない可能性があるケースまで確認できます。当院のボトックス注射については、施術ページでご案内しています。
この記事の要約
- エラボトックスの単位数は、国内承認製剤の用法・用量で合計48〜72単位と定められています。
- 単位(U)は薬の量ではなく力価を表す指標で、製剤が違うと単位数を単純に比較できません。
- 国内の臨床試験では、48単位群と72単位群の改善率に大きな差は見られませんでした。
- 単位数は咬筋の厚みや張り方をもとに、診察を通じて医師が決めるものです。
- 全身性の神経筋接合部の障害がある人や妊娠中の人などは、施術を受けられない場合があります。
エラボトックスの注入量は承認された用法で定められている
エラボトックス(咬筋膨隆に対するボトックス注射)の単位数は、医師が自由に決めているわけではなく、国内で承認された用法・用量が基準になります。
国内承認製剤であるボトックスビスタ注用の用法・用量では、65歳未満の成人の咬筋膨隆に対し、A型ボツリヌス毒素として合計48〜72単位を左右の咬筋に各3部位(合計6部位)に均等に分割して筋肉内注射することとされ、1回の投与量は最大で合計72単位までと定められています。
左右それぞれ3部位ずつ、合計6か所に分けて注射することで、1か所あたりの投与量を抑えながら咬筋全体に行き渡らせる方法が取られています。
この効能・効果および用法・用量は2026年8月の改訂で新たに追加された内容です。それまでボトックスビスタ注用の国内承認適応は眉間・目尻の表情皺に限られていましたが、国内で実施された臨床試験の結果をもとに、咬筋膨隆への使用が新たに承認されました。
「単位(U)」は薬の量ではなく力価を表す
単位は、薬液の量(ml)ではなく、作用の強さ(力価)を示す指標です。添付文書では、1単位はマウス腹腔内投与での50%致死量(LD50)と定義されています。
「単位=ml」と誤解しないよう注意が必要です。実際に注射する液体の量(ml)は、薬剤をどの濃度で希釈するかによって変わるため、単位数が同じでも施設によって注射する液量が異なることがあります。
製剤が違うと単位数は比較できない
添付文書には、力価(単位)は本剤特有のもので、他のボツリヌス毒素製剤とは異なり換算もできないと明記されています。そのため「A院の40単位」と「B院の40単位」を同じ量として比較することはできません。
使用している製剤名が異なれば、同じ数字の単位数であっても効果の強さが同じとは限らないということです。
国内未承認の製剤を用いる場合は、未承認であること、入手経路、医薬品副作用被害救済制度の対象外となる可能性、想定される主なリスクを確認しておく必要があります。
単位数の多さだけで施術の内容を比較するのではなく、使用製剤の承認状況とあわせて確認することが大切です。
エラボトックスの一般的な注入量単位とは
検索でよく見かける単位数と、承認された用法・用量との間には差があることがあります。その理由を整理します。
40単位という数字をよく見かける理由
承認された用法・用量に基づかない単位数が案内されている場合や、製剤・施術方針によって運用が異なる場合があります。個々のクリニックの単位数が誤りだと断定はできませんが、どの製剤を、何単位、何部位に注入するのかを、施術前に確認することをおすすめします。
咬筋膨隆に対する承認適応が国内で追加されたのは2026年8月と比較的新しいため、それ以前から行われてきた施術の中には、承認前の知見や海外での使用経験、あるいは別の製剤の用法・用量を参考にした単位数が案内されているケースもあると考えられます。
承認された用法・用量を一つの基準として、案内された単位数がどのような根拠に基づくのか尋ねてみるとよいでしょう。
48単位と72単位で結果はどう違うのか
咬筋膨隆を有する日本人患者を対象とした国内第III相試験では、投与90日後の改善率(医師評価による咬筋膨隆の程度が2段階以上減少した割合)は、48単位群で40.9%、72単位群で39.4%、プラセボ群で0.0%でした。
この結果から、単位数を増やせば効果が比例して高まるとは限らないことがわかります。効果を保証するものではなく、個人差があります。
また、被験者自身の評価による満足度についても、48単位群と72単位群で大きな差は見られなかったと報告されています。単位数を増やすことは、効果を大きく高めるというよりも、有害事象の発現割合など別の要素に影響し得る面があるため、単位数だけを基準に「多いほうがよい」と考えることは適切ではありません。
単位数は医師が何を見て決めるのか
単位数は、咬筋の厚みや張り方、注入部位の取り方によって決まります。
添付文書では、投与部位は座位で口角から耳介下端への線より下に特定し、笑筋と耳下腺への投与は避け、各注射部位は互いに約1cm離し、咬筋の前縁から1cm離すこと、1部位あたりの投与量は0.3mlを超えないこととされています。単位数は読者自身が指定するものではなく、診察を通じて医師が判断します。
笑筋や耳下腺への投与を避けるとされているのは、これらの部位に薬剤が広がると、表情の動きに影響したり、唾液の分泌に関わる症状が出たりする可能性があるためです。注射位置の正確さが求められる施術であることも、単位数と合わせて理解しておきたい点です。
エラボトックスの単位が多いほど良いわけではない理由
単位数が多いほど効果が高まるとは限らず、増やすことでリスクが生じる可能性もあります。
国内第III相試験で報告された、治療と関連ありとされた有害事象の発現割合は、48単位群5.7%、72単位群3.8%、プラセボ群8.0%で、1%以上に見られたのは筋肉疲労、咀嚼障害、奇異性咬筋膨隆でした。過量投与では、投与部位や周辺部位に脱力や筋肉の麻痺などの局所症状があらわれることがあり、症状が投与直後にあらわれないこともあります。
咀嚼障害は、食事の際にものを噛みにくく感じる症状で、咬筋の働きが必要以上に抑えられることで起こると考えられています。頬がこけるなどの見た目の変化についても、根拠のない頻度表現は避ける必要がありますが、咬筋の萎縮が強く出た場合に生じ得る変化として知られています。
単位数を増やすことは、こうした症状のリスクと引き換えになる可能性がある点を理解しておく必要があります。
エラボトックス2回目以降の間隔と単位数の考え方
効果が薄れてきた場合の再投与についても、決まりや注意点があります。
症状が再発した場合には再投与できますが、3か月以内の再投与は避けることとされています。また、投与を長期間繰り返すと、体内で中和抗体がつくられ、効果が認められなくなることがあると説明されています。
効果の持続や次回の単位数を保証するものではありません。国内の臨床試験では、繰り返し投与によって効果が弱まる傾向は認められなかったとする結果も報告されていますが、これは特定の試験条件下での結果であり、すべての人に当てはまるとは限りません。
エラボトックスを受けられない可能性があるケース
次のいずれかに該当する場合は、施術を受けられない可能性があります。
- 全身性の神経筋接合部の障害がある(重症筋無力症、ランバート・イートン症候群、筋萎縮性側索硬化症等)
- 妊娠中または妊娠している可能性がある、授乳中である
- 本剤の成分に対する過敏症の既往がある
- 他のボツリヌス毒素製剤で治療中である
65歳以上への投与は推奨できないとされており、妊娠する可能性がある女性は投与中および最終投与後2回の月経を経るまで避妊することとされています。
最終的な判断は診察によります。顎関節症の既往や合併症がある場合も、臨床試験では対象から除外されていたことから、事前に医師へ伝えておくことが望ましいと考えられます。
エラボトックスに関するよくある質問
エラボトックスの単位数に関してよく検索される疑問について、断定を避けながら回答します。
初回は少なめの単位から始めた方がよいですか?
単位数は承認された範囲の中で、咬筋の状態を診察したうえで医師が判断します。少なめから始めるかどうかも含めて、自己判断せず診察で相談することをおすすめします。
単位数が多いほど小顔になりますか?
国内の臨床試験では、48単位群と72単位群の改善率に大きな差は見られませんでした。
単位数を増やすことが必ずしも高い効果につながるとは限らず、副作用のリスクにも関わるため、単位数だけで効果を判断することは適切ではありません。
他院で受けた場合と単位数を比べられますか?
力価(単位)は製剤ごとに異なり、換算できないとされています。そのため、使用した製剤が異なる場合、単位数だけで単純に比較することはできません。比較する際は、製剤の種類も含めて確認することが必要です。
まとめ
エラボトックスの単位数は、国内で承認されているボトックスビスタ注用の用法・用量で、合計48〜72単位と定められています。
単位(U)は薬の量ではなく力価を示す指標で、製剤が異なると換算できないため、他院の単位数と単純に比較することはできません。
国内の臨床試験では、48単位群と72単位群の改善率に大きな差はなく、単位数を増やせば効果が比例して高まるわけではありませんでした。
単位数は咬筋の状態を踏まえて医師が判断するものであり、多ければよいとは限りません。
全身性の神経筋接合部の障害がある人や妊娠中の人など、施術を受けられない場合もあります。気になる点は自己判断せず、診察で相談してください。
参考・出典
PMDA ボトックスビスタ注用 添付文書(2026年8月改訂) https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/112130_122940AD1026_3_03
PMDA 審査報告書(2026年8月19日)咬筋膨隆に対する国内第III相試験結果 https://www.pmda.go.jp/drugs/2026/P20260819002/112130000_22100AMX00398_A100_1.pdf